多機能タンパク質であるラクトフェリンをサプリメント(健康補助食品)として摂取することについてご紹介しています。

牛乳から抽出生成されるラクトフェリン

ラクトフェリンは、母乳、特に初乳に多量に含まれている多機能性タンパク質ですが、これを、食品として、または健康補助食品(以下、サプリメントと言う)として摂取する場合、現在では、牛乳から抽出生成したウシ・ラクトフェリンが使用されています。ラクトフェリンには、鉄代謝調節作用を中心に、抗菌・抗ウィルス作用、抗炎症・抗アレルギー作用、免疫調節作用、骨形成作用、抗がん作用、脂質代謝改善作用、鎮痛・抗不安作用など、様々な生理作用があると報告されていますが、このようなラクトフェリンの作用を最大限に引き出すためには、その作用を生かすのにふさわしい方法(形状や摂取の方法等)が重要になると考えています。

腸まで届くラクトフェリン

ラクトフェリンの多様な生理作用を生かす方法の一つとして、ラクトフェリンを錠剤やカプセルの状態で口から摂取する方法があります。ただし、タンパク質であるラクトフェリンは、特に胃内の酸やペプシンという消化酵素によって分解を受けやすいことが知られています。つまり、口から摂取されたラクトフェリンは、胃を通過する間に大部分が分解されてしまい、小腸に存在すると言われているラクトフェリンの受容体(リセプターともいいます)に届くのはごくわずかであると考えられます。

ラクトフェリンの多様な生理活性を余すところなく発揮させるために、当社は、ラクトフェリンが胃内の酸や消化酵素によって分解されることなく、腸まで届くように設計されたラクトフェリン錠剤を2000年に開発、商品化に成功しました。このラクトフェリン錠は、錠剤を特殊な天然素材でコーティングして「腸まで届くラクトフェリン」錠になっています。この製造技術については、特許を取得しております(特許第4592041号)。また、腸まで届いて働く顆粒状のラクトフェリン組成物の開発にも成功し、商品化されています(特許第4050784号、特許第4195486号)。

受容体

生物の体にあって、外界や体内からの何らかの刺激を受け取り、情報として利用できるように変換する仕組みを持った構造または組織のこと。リセプターともいう。

ラクトフェリンの体内移行について

ラクトフェリンの体内移行について小腸の表面には、ラクトフェリンを受け取る受容体が存在することは、ラクトフェリンの研究者によって明らかになっていますが、ラクトフェリンのような高分子タンパク質が、本当に腸管から取り込まれて血中に移行するかどうかは、専門家の間で意見が分かれています。確かに、ラクトフェリンのような分子量の大きな物質は、通常体内には吸収されません。また、薬物や栄養素が腸管から吸収されるときは、一般的には、門脈血というルートを経由しますが、過去にラクトフェリンの研究者が、ラットを用いた実験で門脈血を調べましたが、ラクトフェリンは検出されませんでした。

しかしながら、当社と共同研究を行っている鳥取大学の研究グループは、以前から乳タンパク質成分の腸管からの取り込みについて研究しており、1999年にラクトフェリンが腸管から取り込まれ、血中および脳脊髄液に移行することを仔豚を使った実験で証明しています。

また、2004年には、同大学の研究グループは、ラクトフェリンを十二指腸内に投与したラットのリンパ管から採取したリンパ液中にラクトフェリンが検出されること、このリンパ液を体外に抜き取ると血中にラクトフェリンが検出されなくなること、さらにリンパ系に取り込まれたラクトフェリンはマクロファージ系の細胞に濃密に取り込まれることを報告しました。この事実は、ラクトフェリンは門脈経由ではなく、まず腸管からリンパ管に取り込まれ、やがて体内循環に入って血中に移行することを証明しており、また、マクロファージ系の細胞に取り込まれて体内を移行し、作用を発揮している可能性も考えられます。このように、ラクトフェリンは腸管からリンパ系を介して体内に移行し、腸溶製剤であればラクトフェリンの様々な機能が発揮されることが明らかになってきましたが、ラクトフェリンの体内動態については、口腔粘膜や皮膚からの吸収の問題も含め、今後の更なる研究が待たれるところです。

腸溶性ラクトフェリン製剤(錠剤、カプセル剤、顆粒剤)の開発

生理活性タンパク質が体内で作用を発揮する場合に、分解されたペプチド断片の作用なのか、分解されていないインタクトなタンパク質分子の作用なのかは区別しにくい面があります。ラクトフェリンは胃内消化酵素のペプシンの作用を受けやすいと言われており、摂取量や胃内の条件にもよりますが、経口摂取されたラクトフェリンの作用は、主としてラクトフェリンそのものではなく、ラクトフェリン由来のペプチド断片の作用であると考えるのが自然です。従来、そのような考え方に基づき、ラクトフェリン粉末或いは粉末を打錠しただけのラクトフェリン錠菓を用いて実用化が進められてきました。

これに対して、当社は、ラクトフェリン分子そのものの生理作用を重視し、その機能を発揮させるため、胃内でペプシン消化を受けないような製剤の開発に取り組み、商品化に成功しました。ラクトフェリンは、多機能な生理活性を持ったタンパク質であり、経口摂取によりそれらの作用を充分かつ効率的に享受するためには、当社が保有しているこれらの「腸溶性」の製剤特許が有効であると、当社は考えています。

ラクトフェリンの直接作用について

ラクトフェリンの多様な生理作用を生かすもう一つの方法として、ラクトフェリンを含有するクリームを化粧品として利用することや、軟膏剤として体の患部(皮膚や粘膜等)に直接、塗る方法やなどして、或いは、口腔貼付剤として口腔粘膜から吸収させるなど、色々な剤形、使用法が工夫されています。皮膚への吸収のメカニズム、作用機序など、まだ未解明の分野でありますが、今後の発展が期待されます。