ラクトフェリンは、ヒトを含む哺乳動物の母乳、特に出産直後の初乳に多量に含まれているタンパク質です。
人類は、特にラクトフェリンへの依存度が高いと言われています。

ラクトフェリンとは

ラクトフェリンは、「牛乳の赤いタンパク質」として、1939年に北欧の学者が発見した、乳から分離された鉄結合性の分子量8万の糖タンパク質です。ヒトを含む哺乳類の乳(特に初乳)に多く含まれていますが、成人においても涙液、唾液、膵液その他の外分泌液や好中球に含まれており、好中球106個あたり毎日3.45μgが合成されていると言われています。体内のラクトフェリンは、大部分が鉄イオンが結合していない状態のアポ型であり、3価の鉄イオンや2価の銅イオンに出会うとこれを強く結合することによって、細胞や遺伝子を酸化障害から守っています。

黄色の部位がラクトフェリン、●は鉄イオン
図1 ウシ・ラクトフェリンの分子構造

アポ型

鉄などの重金属イオンの結合部位が空席の状態がアポ型と言われ、重金属イオンが結合している状態をホロ型と言います。市販されている牛乳由来のラクトフェリンは、結合部位の10~15%が鉄イオンを結合していますが、85~90%の結合部位は空席であり(アポ型)であり、遊離の重金属イオンを結合、除去する能力を十分に保持しています。

表1 ウシ・ラクトフェリンの物理化学的性質

分子量 83,100
アミノ酸残基数 689
糖含量 11.20%
糖鎖数 4
等電点 8.2~8.9
鉄イオン結合数 2

表2 ヒト外分泌液中濃度および乳汁濃度

ヒト外分泌液中のラクトフェリン濃度
唾液 5-10μg / ml
0.7-2.2mg / ml
胆汁 10-40μg / ml
膵液 0.5mg / ml
尿 1μg / ml
血液 0.1-2.5μg / ml
好中球 3.45μg / 106cells
人乳(母乳)および牛乳中のラクトフェリン含量
母乳 初乳 6-8mg/ml
常乳 2-4 mg/ml
牛乳 初乳 0-1 mg/ml
常乳 0.02-0.35 mg/ml

ラクトフェリンが有する多彩な作用

ラクトフェリンには、この鉄代謝調節作用を中心に、抗菌・抗ウィルス作用、抗炎症・抗アレルギー作用、免疫調節作用、骨形成作用、抗がん作用など、様々な作用があるといわれています。さらに当社と鳥取大学との共同研究により、ラクトフェリンの新規作用として、脂質代謝改善作用(特許第3668241号)、鎮痛・抗不安作用(特許第3806427号)があることも分かり、用途特許を取得しております。この他にも、抗ドライアイ作用(特許第4278473号)、抗頻尿作用(特許第4201771号)、抗加齢性眼疾患作用(特許第4300324号)などの各種用途特許を取得しています。このような多機能な生理活性を有するラクトフェリンを当社の事業のひとつの柱としていることは、「QOL(Quality of Life = 生活の質)向上を通じて健康をお届けする」という、当社の経営理念に合致していると考えています。

豊富な学術研究のサポート

これまでに発表されたラクトフェリンに関する学術論文数をPub Medで調べると6,000報を超えており(2012年)、年々、200報以上のペースで増え続けており、他の素材に比べて、ラクトフェリン研究がずば抜けて活発であることが分かります。
さらに、ラクトフェリンという魅力的な生理活性タンパク質に関心のある各分野の研究者の情報交換の場として、2年に1度、「International Conference on Lactoferrin – Structure, Function & Applications – 」というラクトフェリン国際会議が開催されています。会議の副題からも分かるように、構造、機能および応用といった幅広い分野、領域の研究者が一堂に会して研究成果の発表や研究討論の場となっています。この国際会議は、2013年には第11回を数え、イタリアのローマで開催される予定です。この間、2004年から隔年に国際会議の間を埋める形で国内のラクトフェリン研究者の情報交換の場として「ラクトフェリンフォーラム」が開催されるようになり、2010年には「日本ラクトフェリン学会」に改組されました。このような豊富な学術研究のサポートが当社のラクトフェリン事業を支えていることは言うまでもありません。

Pub Med

米国国立医学図書館の国立生物化学情報センターが作成している生物医学文献データベース

腸の表面に存在するラクトフェリンの受容体

2001年にカナダで開催された、第5回ラクトフェリン国際会議において、ヒトの小腸にラクトフェリンを受け取る受容体(リセプターともいいます)が見つかったことが報告されました。この受容体の組織分布を調べたところ、小腸だけでなく、精巣、卵巣、骨格筋、副腎、膵臓、肝臓、唾液線、乳腺、甲状腺、などほぼ全身で発現しており、更には胸線、脾臓、リンパ節などの免疫担当組織や、役割は不明ですが心臓や脳などにも存在することが明らかになりました。このように、広範な部位にラクトフェリンの受容体が存在していることは、ラクトフェリンが体内で様々な生理現象をコントロールしている極めて重要な多機能性生理活性タンパク質であることを強く示唆するものと当社は考えています。

受容体

生物の体にあって、外界や体内からの何らかの刺激を受け取り、情報として利用できるように変換する仕組みを持った構造または組織のこと。リセプターともいう。

安全性が確立しているラクトフェリン

ラクトフェリンは、私たちヒトを始めとする哺乳動物の体内にもともと存在する成分であり、母乳を介して乳児が多量に摂取しています。この事実は、ラクトフェリンの安全性を裏付けるものと考えられます。また、市販されている牛乳由来のラクトフェリンの安全性については、ラットに最大2000mg / kgまで13週間連続して経口投与しても問題になるような異常が認められないこと(K. Yamauchi et al., Food and Chem. Toxicol., 38(2000), 503-512: 13-Week Oral repeated Administration Toxicity Study of Bovine Lactoferrin in Rats.)、及び変異原性もないこと(K. Yamauchi et al., J Toxicol. Sci., 25(2), 63-66(2000):Mutagenicity of Bovine Lactoferrin in Reverse Mutation Test)が報告されている。

我が国の食品添加物リストには「ラクトフェリン濃縮物」として収載されており、その起源、製法、本質からして安全性の高いものと考えられている。さらに、これまで世界中で牛乳由来ラクトフェリンを有効成分とする製品が長年にわたって、多数の人々に摂取されていますが、特に問題 となる事象は報告されていません。